本場黄八丈は、東京都八丈島で織られている絹の縞文様の織物です。黄八丈はその名の通り、黄色を基調とするものと、ほかに、とび色、黒色を基調とするものがあり、それぞれが植物染料で染められています。黄八丈は、イネ科の多年草であるカリヤスや、トビハ、マダミの生皮を使用し、黒八丈には、椎の木の皮が染料として使用されています。昔から黄八丈は庶民のものとして使用されており、今もなお明るい南国の匂いが感じられます。また、本場黄八丈のほかに、秋田地方では、「秋田黄八丈」と呼ばれるものがあり、はまなすの花を染料に使われているようです。黄八丈によく似ているのでその名がついたそうですが、本場黄八丈と比較すると、ややくすんだように見られます。黄八丈は、アンサンブルとしてよく用いられ、街着、上品な普段着、会合などの装いに適しています。
上布とは、細い麻糸で織り上げられた着物のことをいいます。純粋な麻で織り上げた上等な布という意味があり、これに対し、苧麻(カラムシ)のラミー糸を使ったり、木綿を混ぜて織られたものを下布といいます。上布は通気性がよく、汗をかいてもすぐに乾く特性があるので、湿度の高い日本の夏着物には最適です。
上布の産地には有名なものがいくつかあります。新潟県南魚沼市や小千谷市の『越後上布』、沖縄県宮古島の『宮古上布』、石川県鹿島、羽昨地方の『能登上布』、滋賀県の『近江上布』などがあります。上布は、しゃりしゃりとした風合いが好まれ、暑い中でも風が抜けていく心地よさがあります。納涼や家庭着として、またはお洒落な外出着としても用いられます。