■紋の種類
着物に入れる紋は、その技法によっていくつかの種類に分けられます。代表的なものは、着物を染めるときに白く染め抜く「染め紋」。これには、紋の形を染め抜く日向紋と、紋を描く線を抜く陰紋があります。染め抜き日向紋が最も正式で格上とされ、第一礼装にはこれを用います。
染め紋に次ぐものに、「縫い紋」があります。これは刺繍で紋を入れたもので、略礼装などには色糸を使ったり、輪郭に金糸をあしらう、色を変えてぼかしにするなどの技法もあります。
このほかには、やや遊びを取り入れた「洒落紋」があります。これにも染め紋と縫い紋がありますが、どちらも鮮明な色彩で本来の家紋のまわりを色とりどりの花で囲んだり、家紋と花などを組み合わせたもの、家紋とは関係なく松竹梅などのおめでたい模様を取り合わせて紋としてデザインしたものなどがあります。また、やや特殊なものとして「貼り紋」があります。これは、貸衣装などでもともと紋の入っていない着物に、同じ地布に紋を入れたものを切り抜いて貼り付けるものです。
■紋の数と位置
着物の紋は、入れる位置が決まっています。紋付きにする場合、必ず入れるのが背中心。「背紋」といい、背紋のみのものを一つ紋と言い、略礼装となります。
次に両方の後ろ袖に入れる「袖紋」。袖山から約7.5cm下がったところに、外袖の幅の中央に紋の中心が来るように入れます。背紋と袖紋を入れたものを三つ紋と呼びます。
さらに両胸に胸紋、抱き紋と呼ばれる紋を入れます。すべての紋を入れたものが五つ紋です。
紋の数は増えるにしたがって格が上がりますので、第一礼装である黒紋付(黒喪服)、黒留袖には必ず染め抜き日向紋の五つ紋を入れます。