■男性の着物
男性はお茶をたしなむ方以外では、礼装の紋付羽織袴以外は持っていないことが多いようです。ですので、男性の着物の種類や数が減ってきているのが現状です。お茶席にお客として行く場合はスーツでもかまいませんが、水屋でのお手伝いであればぜひとも着物姿で行きたいものです。男性の着物は女性に比べて色数もすくなく、渋い色合いが多いですが、色の濃淡や帯、半衿との取り合わせで個性を表現しましょう。
まず、茶道での男性の礼装は十徳です。これは、お家元から許しを得た方のみ着用できるこので、十徳とは、茶の効用を説いた「茶の十徳」からの命名や、僧服の「直綴(じきとう)」からの転訛とも言われます。十徳の生地は黒の紗で、季節に関係なく単衣仕立てにします。付け詰めの広衿で、衿は折り帰らず、マチなしの共紐で羽織とは異なるものです。下に着る着物は、黒紋付や羽二重もしくは御召の生地に角帯を締めます。大柄な縞物や浴衣など、普段使いの着物はふさわしくありません。そして、十徳の許しのない方は無地の着物に袴を着用します。袴を着用される方はお稽古や大寄せのお茶会には紬や御召の着物に、縞目か無地の袴を付け、式正な茶事や弔事の際には五つ紋か三つ紋の入った着物に、縞目のある仙台平の袴を付けます。
袴には馬乗り袴と行燈袴があります。馬乗り袴はズボン型、行燈袴はスカート型ですが、これはどちらを着用してもかまいません。礼装用の袴は襠高袴で、仙台平が一番とされているのは、気品のある縞目で、立った時に自然にひだが整い、座って落ち着くからです。茶席では開炉の茶事など以外であれば、そのほかの無地や紬の袴などでも構いませんし、若い方は紺系統、年配の方は茶系がふさわしく、縞目は太くなるほど若い方に向きます。袴の下の帯は角帯を締めます。
また、男性の着物の場合は、羽織とセットになっているものも多いです。着物と共生地のものや、色味を変えて着物と羽織のコーディネートを楽しめるものもあります。道中は羽織を着ますが、茶席の中では脱ぎ、持って行った袴をはくか、お稽古の場合は着流しでも構いません。この場合も帯は角帯の方が引き締まった印象を与えることができます。
男性の着物も季節によって衣替えをします。基本は女性と同じで、袷、単衣、紗、麻、塩沢などがあります。六月と九月には単衣の着物に袴、七月八月は絽の着物と絽の袴。朝茶事には麻の上布などが向いており、この時はあまり仰々しくせず、袴を付けず着流しでもよいでしょう。